参政党による発達障害否定説から考える衆議院選挙
2月8日は衆議院選挙。物価高や少子高齢化、安全保障など多くの課題が山積みとなっている。そんななか、最近また参政党による「発達障害否定説」が浮き彫りになっている。
参政党の発足は2020年。そこから5年足らずで急激に勢力を伸ばし、昨年7月の参議院選挙では15議席を獲得した。
そんな参政党は、過去に極端なオーガニック食を推奨したり、コロナ禍では反マスク・反ワクチンを掲げるなど医学的・科学的根拠のない主張を続けている。
反医療的な主張のなかでも私が最も注目しているのが「発達障害否定説」。2022年、参政党が有識者向けに発行した冊子の中で神谷宗幣代表は「普通の子供たちと全く同じ教育を行えば問題ありません。そもそも、発達障害など存在しません。」と述べている。
発達障害否定説が書かれている章の中で、識者的立ち位置にいるのが当時参政党共同代表だった吉野敏明氏(現在は日本誠真介)。吉野氏のもとには発達障害と診断されたという子どもが訪れる機会が多いとされ、あたかも児童精神科医のような描かれ方をしているが実際は歯科医師であり、精神医学の専門家ではない上、医師免許も持っていない。
吉野氏は小麦・砂糖・油・乳製品を「四毒」と呼び、これらの摂取をやめると健康になると提唱しているが、医学的根拠はない。四毒はオーガニック思考の人や自然派の人にウケが良い。その延長線上に発達障害否定説もあるのだろう。
この冊子による発達障害否定説に批判が殺到したのが昨年7月の衆議院選挙のとき。その際、一般社団法人日本自閉症協会と日本発達障害ネットワークが抗議の声を上げている。
多くの批判を受け、参政党の松田まなぶ氏は「私が発達障害の存在を否定した発言をしたのは2年前のこと。現在はその説は拡散していない」という内容をXでポストした。参政党は過去の情報でエビデンスに関して突っ込まれて答えられないものに関して「今は違う考えだ」と手のひらを返すことが非常に多い。神谷氏も過去に「小麦が体に悪い」という発言があったそうだが、現在は麦でできているはずのビールやラーメンを飲食している投稿が見られる。
また、党員によっても主張が異なる場合がある。もしかすると発達障害否定説に関しても参政党全員が否定しているわけではないのだろうが、冊子に書かれているのなら党として発達障害を否定していると思われても仕方がない。
私を含め、発達障害当事者は発達障害の特性によりうまく社会で生きていけないことで悩んできた。少しでも生きづらさを軽減するために、精神科や心療内科に通院して薬を飲んだり、カウンセリングを受けたり、自助会に通う人もいる。
雇用に関しては障害者雇用で働く、クローズで働く(職場の人に障害を明かさず働くこと)、一部の人のみクローズにして働くなど、働き方を選んでいる人もいる。
二次障害でうつ状態になり働けず、悩んだ末に自ら命を絶ってしまった当事者のSNSも見たことがある。
発達障害と診断された子どもの場合、療育に通う、支援級に通う、服薬する、合理的配慮を受けるといったサポートを受けられる。参政党の冊子にあったよう、ほかの子どもたちと同じ教育を受けるとうまく適応できず不登校やいじめに繋がってしまう場合もあるのだ。
発達障害を否定されてしまってはさらに苦しむ人が生まれてしまう。
最近ではニューロ・ダイバーシティ(脳の多様性を認め合う)の考えで同じ学級で学んだり、同じ職場で戦力になろうという動きもあるが、これはただ単に同じ空間にいるというわけではなく、脳の特性を尊重し合おうという前提がある。みんな同じ環境にぶち込んで同じ教育を受ければいいというのは、障害特性によりできないことがある人にとって、ただの根性論に過ぎなくなる。
参政党は主張がコロコロ変わるため、今は発達障害否定説を否定している可能性もあるが、反グローバル・反同性婚・反LGBTという基本的にマイノリティを否定する思想を持っているため、マイノリティ側にいる障害者全般は「見えないもの」として追いやられるのが目に見えている。
来週の衆議院選挙、誰に・どこに入れるのか。自分事として投票に行ってもらいたい。
余談だが2021年、とある発達障害当事者から某大学で一緒に発達障害について対談形式で講演をしてほしいと言われて登壇した。講演を終えると、その方が車で最寄り駅まで送ってくれるという。お言葉に甘えて車に乗り込むと、後部座席には「参政党」と書かれたオレンジ色ののぼり。マジかよ。私は知らないうちに参政党の党員と仕事をしていたのであった。
飲み屋でこの話をすると絶対にすべらない。
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